機材やケーブルを比較する時の3つのコツ

投稿者: | 2014-11-29

機材やケーブルを比較する時の3つのコツ
プロエンジニア、トラックメーカー/DJ、オーディオ、各々立場は違えど音楽に関わっている人が自分のリスニング環境をレベルアップさせる時には多かれ少なかれ比較試聴をすると思います。

再生音のレベルアップの方法には、スピーカーやアンプを変える、ケーブルを変える、部屋を吸音するetc、様々な方法がありますが何も考えずに闇雲に変えても『どう変わったのか』『何が要因で変わったのか』等が分からずにノウハウも溜まっていきません。

もしあなたがこういった時に比較を行わずにきたのならば次からは当記事のコツを読んで比較してみることをオススメします。

 

比較試聴する時の3つのコツ

 

  1. 試聴につかう音源の選び方
  2. 試聴する音源に目的意識を持つ
  3. アーティストの場合、比較試聴に自作品以外でも試聴する

 

の3つを今回は紹介したいと思います。

今回は分かりやすくケーブルの例で書いていきますが、スピーカーやオーディオインターフェイス/他の機材等でも全て同様ですので、ご自分のケースに置き換えて読んでもらえれば参考になるかと思います。

 

 

 

1.試聴につかう音源の選び方


ケーブルを比較する際には、それを通った音楽を聴いて使いたいケーブルの音質を聴き分けていくわけですね。

その時に聴く音源は出来るだけ幅の広いジャンルの音源を用意した方が良いです。もちろん好みの問題もありますが普段聴かない音源も使う必要があります。

なぜなら音源というものは、

『時代やジャンルによってMIXやマスタリングにある程度の共通傾向』があるからです。

 

ですので、同じジャンルや同じ時代の音源ばかりの試聴ですと、

  • 音源の周波数レンジ
  • ステレオ感
  • ダイナミックレンジ(音圧感)

こういった試聴に必要な要素の傾向が偏ってくるケースが多くなってくるので、厳密な判断がしにくくなると思います。

例えば、普段トラックメイクしている人は、現代のClubトラック以外にも古い時代のアコースティック系の音源も試聴音源にいれるといいです。もちろん録音の質は高いものがベストだと思います。

Clubトラックは音圧を稼ぐためにダイナミクックレンジを狭くしています。古めのアコースティック系のもの(例えばJAZZなど)はダイナミックレンジが広いので、こういった音源も試聴音源に入れると奥行き感や音量の表現力を判断することがしやすくなります。

 

 

 

 

2.試聴する音源に目的意識を持つ


これはただ闇雲に音楽を聴くのではなく、その音源の何を聴いて試聴の判断材料にするかをしっかり意識するという事です。
もちろん全体をざっくり聴いて判断することも重要ですが曲ごとに目的意識を持っておくと判断がしやすくなります。

例えばあるJAZZの音源では奥行き感とアコースティック楽器の質感を判断したり…

あるClubトラックでは、複雑にレイヤーされたシンセの見え方で周波数の分離や定位といった解像度をみたり…

 っといった感じです。

 

 

特にDAWを使っている人は、曲中で判断しやすいポイントがあればループさせたりマーカーを打っておくと良いと思います。

私の場合もDAWに様々な楽曲を判断しやすいポイントで並べてマーカーを打ち、その部分がすぐに再生可能な状態にしてあります。


楽曲の選択は、

  • 現代的な周波数レンジを持つ音源。→周波数バランスの判断。
  • 定位や音の配置が複雑な音源。→横や高さの解像度の判断。
  • ダイナミックレンジの広い音源。→奥行き感の表現力の判断。
  • センターにほとんどの楽器が定位して残響が多い音源→センターのパワー感と残響の解像度の判断。
  • 自分で録音し、常に生音を聴いている楽器の音源→再生音の忠実性を判断。

といった感じです。


これらの様に判断材料としての目的にあった音源をその時々で選択して試聴すれば、かなり厳密に音質傾向が判断できると思います。

 

 

 

 

3.アーティストの場合、比較試聴に自作品以外でも試聴する


まずアーティストやクリエーターがケーブル等を比較試聴する時、自分で作った作品で試聴することが多いと思います。

私も比較試聴の場合はまず自分の作品やstudio dubreelでMIXを手がけた作品を使います。

これは録音やMIXまで自分で行った作品の場合、音の全てに関わっているので定位やエフェクトはもとより楽器の音も隅々まで熟知しているわけです。

これを比較の際の音源に使うのは非常に理にかなっているのです。

そういった大きなメリットがあるのですが、

実は自分の音源を比較試聴に使う事によるデメリット/注意点があります。

この点を理解して上手く使っていけば大きなメリットのある自分の音源での比較試聴ですので、これから注意点を書いていきます。

 

 

 

●以前使っていたケーブルで良く聴こえてしまう

 

これは良く考えれば分かる事なのですが、何気なく試聴していて意外に気がつかない人が多いです。

例えば、再生機(オーディオインターフェイスでもCDでも何でも)からスピーカーに繋いでいるケーブルを色々試すとします。

今まで仮にAというケーブルを使っていて新しくBを試す場合、自分の音源で試聴すると大体はAの方がいい感じに聴こえる事が多いです。

これは良く考えれば当たり前で、今までの自分の音源は、Aケーブルを通った音を聴いてMIXしているからなんですね。言い方を変えればその音源は『Aケーブルを通った状態で良い音になるように作られた音源 』ともいえるからです。

仮にAケーブルが少し低音が出やすいケーブルだったらMIXする時は少し低音が足された音をモニターしてMIXする訳です。なので、そのモニター環境で良いバランスにMIXできたとすると普通より低音がすこし少なめな音源に仕上がる事になります。

その音源をBケーブルで聴いたとします。

仮にBケーブルがちょうど良い周波数バランスのケーブルだったとしても、その環境でMIXした音源を聴いた時には『ちょっと低域が痩せるなぁ~』、
っといった聴こえ方になってしまうんですね。

 

正確に判断する方法は2つあります。

 

まず当たり前で安易に感じるかもしれませんが、自分の音源以外の音源でも試す事です。

自分の曲で聴いて感じた音の変化を市販の曲でも同様に感じるか試してみるのです。その際にははじめに書いた2つのコツを意識してみるとより良いと思います。

 

 

次に自分の音源だけを使って正確に判断する方法です。

 

それは少し時間がかかりますがA/B各々のケーブルを使ってMIXし直してみる事です。DAWソフトを使ってMIXしている場合でしたら簡単に試せると思います。

コツは今までのMIXから少しだけ何も処理していない状態に戻したファイルを一度作り、そのファイルからスタートしてA/B両方ともMIXをやり直してみます。

※例えば、EQとコンプの設定のみ全てフラットに戻してMIXしなおしてみる。

こうすれば1からやり直すほど時間はかかりませんが、ちゃんと違いは出ると思います。そして各々のケーブルでMIXしたものを色々な環境で聴いてみるのです。

友達の家、クラブのPAで、車の中等…。

そうすると色々とケーブルの特性が分かってくると思います。基本的には色々な環境でもMIXのイメージがあまり崩れなければ、そのケーブルはフラットな音傾向に近いという事が分かります。

これにさらに市販の質の良い音源も試聴に加えれば、より正確なケーブルの音の癖が分かってくると思いますよ。
 

 まとめ


どうでしょうか?

 

これらは私がスタジオで新しく機材やケーブルを試したり、部屋の吸音やスピーカー位置を調整する際にこころがけている事です。

 

  1. 試聴につかう音源の選び方
  2. 試聴する音源に目的意識を持つ
  3. アーティストの場合、比較試聴に自作品以外でも試聴する

あなたも機材やケーブル等を比較試聴する際には3つのコツを試してみてください。

自分の中での音の聴き方や感じ方がより繊細になって、さらに音へのノウハウが貯まってくると思います。

カテゴリー: 音楽

NORI について

studio dubreel エンジニア。ベース/ギター/パーカッション奏者でジャンル問わずGrooveのある音楽が好き。特技はたこ焼き、インドカレー、スズメバチの生け捕り。

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