ミックスダウンやマスタリングで、スタジオにファイルを持ち込む時に知っておくべき作法3つ。

投稿者: | 2014-12-17

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作法というと少し大袈裟ですが、知っておくと良いマナーですね。

これは基本的にうちのスタジオでミックスダウン/マスタリングの依頼をもらった時にファイルを持ち込む人に伝えている事なのですが、他のスタジオへの依頼時やリミキサー/他アーティストとの共同作業する場合にも共通する部分が多いと思います。

今回のマナーに関しては知っていれば誰でも簡単に実践できることですので是非読んで知っておいて下さい。

たかがファイルですが、持ち込み方によって意外にもエンジニアや相手アーティストのモチベーション/作業効率に関わってきますよ。

ファイル名の付け方

●MIXの場合

ミックスダウンを頼む場合、各パートをマルチでばらばらに書き出してスタジオに持ち込むことになります。

それぞれのパートのファイルの名前は誰でも分かる名前をつけておく様にしましょう。

たまに本人にしか分からない様なパート名や、ひたすらTRACK1.2.3等があります。作っている本人は音を把握しているので問題ないかもしれませんが、エンジニアは初めて聞く曲になる訳です。ミックスダウンをする時、はじめに曲を聴きながら曲全体がどんなパートで構成されているか把握していく訳ですが、その時に誰でも分かるパート名になっていれば把握作業の時間も短縮されます。パート名から音がまったく連想できない場合、ひとつずつSOLOで聴いてリネームしなくてはいけないので余計な作業が増えます。

例えば曲を聴いてエンジニアが『まずベースの音から手を付けよう』と思っても、各パート名がソフトシンセの名前のままだったりすると多くのパートの中からSoloにして音を聴き探すことになります。bassと書いてあればすぐ分かりますよね。下の例ようなネーミングならすぐ取り掛かれます。

【ファイルネームの例】

  • 01_Kick
  • 02_Bass
  • 03_SN
  • 04_Hat
  • 05_Hat2
  • 06_Epiano
  • 07_SYN1
  • 08_SYN2
  • 09_VO
  • 10_Cho1
  • 11_Cho2
  • 12_CYM
  • 13_SE1
  • 14_SE2
  • 15_EFX

どうでしょうか?このファイル名ならば曲を聴けば大きな回り道をしなくても弄りたい音にたどり着きますよね。

またファイル名の頭に番号を振っているのは読み込んだ際にこの順番で読み込まれる場合が多いからです。事前にリズム隊から上モノとトラックの並びが分かりやすい方がエンジニアも作業しやすいですので。ただDAWによっては読み込み方式に違いがあるかもしれませんが、多くは番号や頭文字順に読み込まれますので私はこのようにしています。

もし特殊な楽器や音でどんな名前をつけていいか分からないパートがあれば、自分でわかる名前にしておいてファイルを納品する同じフォルダ内にTEXTファイル等で説明を入れておけば良いかと思います。

●マスタリングの場合

2mixから行うマスタリングの場合、基本的にはファイル名は曲目でokです。長い曲名なら大体分かる感じに省略すれば良いと思います。また曲順が決まっているのであればMIXの時に書いた例のように曲名の前に『01_songname』と番号を入れておきましょう。

またマスタリングでは同じ曲でも複数の2mix素材を出して、マスタリングエンジニアに一番よい結果になるものをチョイスしてもらい処理していくケースもあります。例えばミックスダウン時にボーカルの音量をどれ位にするかバンド内で意見が分かれたが、どちらも曲のバランスとしては成立している場合、2種類ミックスダウン違いの2mixを用意しマスタリング後にどちらを取るか決定したい場合などですね。
そういった場合でも

  • 『01_songname_Vo_0dB』
  • 『01_songname_Vo+2dB』

といった形でマスタリングするエンジニアがファイル名から2mixの違いが分かるようにしておくと良いと思います。

ミュージシャン立ち会いマスタリングの場合は音の説明は直接できるのでファイル名に工夫しなくても良い気がしますが、ファイル名にも記載してあった方が無駄な時間が省かれ、確実にマスタリングの作業効率はUPします。

必要なファイルだけ持ち込む

新規メディアに作業に必要なファイルだけ入れてスタジオに持ち込む。

これも以外に多いのですが、持ち込まれたUSBメモリやハードディスク等を開くと大量のフォルダやファイルが入っている場合があります。大量にあっても整理整頓され誰でも分かるようにしてあれば良いですが、基本は新規メディアに必要なファイルだけを移して持っていきましょう。

また、MIX用のマルチファイルのフォルダをコピーしたら、MIXで使うファイル(パラで書き出した)以外にセッションファイルやNGテイク等の不必要なファイルが大量にある場合も、コピー時間に無駄が出てしまいますしエンジニアのモチベーションが下がると思います。

フォルダの名前もファイルネーム同様、分かりやすくしておきましょう。

ファイルの書き出し方法

●書き出し範囲

これに関してはスタジオによって色々と違いがあるかと思いますが、基本的には全てのパートを曲の頭から終わりまでオーディオファイルとして書き出すのが良いです。

※ただしミックスダウンを依頼するスタジオと同様のDAWソフト(例えばProTools)でレコーディングしていた場合、そのままセッションファイルで持ち込んでもらえば問題ありません。

ミックスダウンを依頼するスタジオと違うDAWソフトやマルチトラックレコーダーで録音されている曲に関しては、基本的には全てのパートを曲の頭から終わりまで書き出してください。また例えば曲の中間に一度しか出てこないパート(例えば効果音的シンセやギターソロ…)は曲の頭からそのファイルの終わりまでOKです。こういった曲の途中で終わっているファイルに関しては曲頭からそのパートの終わりまでの 書き出しでも問題はありません。

ただ書き出しに慣れていない方はパートごとに書き出し範囲指定を変更するとミスする可能性もあるので不安な場合は曲の頭から終わりまでの書き出しをオススメします。

●書き出し時のサンプリングレート/ビットレートの設定

また書き出しの際には録音時のサンプリングレート/ビットレートのままで、『マスターエフェクト、ノーマライズ、ディザー』等をOFFにして書き出して下さい。これはMIXでもマスタリングでも同様でMIX/マスタリング工程の音質に大きく関わってきます。ソフトによってはデフォルトでノーマライズ/ディザがONになっているものもあるようなので確認してみてください。


まとめ

経験上、気になるケースを書いてみましたが、
要するに『エンジニアや相手アーティストに不必要な作業をさせないように準備しておく事』につきます。相手への思いやりが伝わり良い作品作りに繋がると思います。

もちろんプロのエンジニアはどんな状況でも音に集中して作業できます。それでも、しっかり準備がされているプロジェクトでは余計な作業や不安もない為、よりクリエイティブな面だけに集中できますよね。

音楽だけに関わらず共同での作品作りの時には、関わるアーティストやスタッフの調子を最大まで引き出してやる!っ位の感覚で準備しておくと良いんじゃないでしょうか(笑)。

参考になれば幸いです。それでは。

※今回の記事はstudio dubreelのみに該当する様な内容にはしていませんが、『ファイルの書き出し方法』に書いた内容はスタジオによって必要とするファイルが違う場合もありますので、必ず依頼するスタジオにきちんと聞くようにしてください。
カテゴリー: マスタリング

NORI について

studio dubreel エンジニア。ベース/ギター/パーカッション奏者でジャンル問わずGrooveのある音楽が好き。特技はたこ焼き、インドカレー、スズメバチの生け捕り。

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